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イラスト詳細

しあわせなよるに/傾 千悠によるクリスマスピンナップ2019

作者 傾 千悠
人物 黒 薔薇
白 薔薇
紅 薔薇
イラスト種別 3人ピンナップクリスマス2019(サイズアップ)
納品日 2019年12月24日

11  

イラストSS

 濃藍の天鵞絨に淑やかで清らかな宝石の花を振りまいたかのような星光りのあえかな夜。

 すや、すや。ちいさな薔薇のお姫さまが眠るベッドは春に咲く花の彩を柔らかに纏い、お姫さまの傍らには真っ白なうさぎのぬいぐるみと大きなサンタブーツがサンタのお姉さまを迎えてくれる。
 静寂の中、良い子の寝息が規則正しく繰り返されている。妹である紅薔薇の枕元に近づく黒薔薇は音を立てないようにこっそりこっそりと息を潜めていた。ふわふわのルームシューズは柔らかなカーペットと相性抜群で、足音はばっちり消すことができていた。
(よく眠っているわね)
 黄金細工を溶かして流したような繊細で美しい髪をふわりと広げてお行儀よく眠る紅薔薇は、あどけなくすこやかな寝顔を見せている。
(なんて幸せそうな寝顔)
 ――いったい、どんな夢をみていることやら。

「んー」
 寝言に一瞬動きを止めて見つめていると、ふにゃりと微笑むちいさな唇が名を紡ぐ。
「ね、え、さま……」
(もう、驚かされたわ)
 きっと、夢の中でも三姉妹は一緒なのだろう、とそんな予感に眦を柔らかに緩めながら。
「特別よ」
 ほんの幽か、空気を優しく震わせる囁きひとつ。
 黒薔薇は愛らしい包装のプレゼントをそぉっとそぉっとサンタブーツの中に入れて、部屋の入り口を振り返る。
 ドアを開けたまま見守っていた白薔薇が控えめな灯りを手に優しい微笑みをみせて頷いた。

 ちいさな紅薔薇のふたりのお姉さまは、愛しき薔薇のお部屋からそぉっと出て安心した様子で視線を交わす。ふたりの大切な妹は明るく天真爛漫に育っている。

 ひた、ひたとお揃いのルームシューズで歩く廊下の先には、数時間前まで楽しくパーティをしていた部屋がある。

 ――大丈夫ですの。
 両親が亡くなった時、儚げなアクアマリンの瞳を潤ませて、けれど凛とした意志を見せて。
 白薔薇は微笑んだのだった。

 ――哀しい想いをさせないように、辛い気持ちから守れるように。傷つくことのないように。
 いつも柔和で春の綿毛のように可憐な姉は、妹たちを守り続けている。隠し事までして――本当は、知っているのだけれど、と黒薔薇は長い睫を伏せた。
「今日は一日、お疲れ様でしたの、黒薔薇」
「お疲れ様、白薔薇」
 ふたりを迎え入れた部屋はパーティの名残を残して華やかで、少し寂しい。おひさまが眠りに落ちたあとの夜はゆったりと穏やかに時を刻んで、また賑やかになる朝を楽しみに星が瞬いている。

 ふわ、と白い湯気をゆらして白薔薇がホットミルクを差し出した。物思いにふける間に用意してくれたのだ。
「明日の朝、紅薔薇はどんな顔をするのかしら? 楽しみね」
 手にじわりと熱を包んで視線を合わせれば、どんな星より煌めく透明な輝きがとろりと愛情を向けて微笑んだ。そして、小さな箱を差し出して。
「メリークリスマス、良い子の黒薔薇にサンタさんがプレゼントですの」

 紫水晶がぱちりと瞬いて、嬉しいサプライズに伸ばした指先が――あたたかな愛情に届く。

「メリークリスマス、白薔薇」
 お部屋では良い子の紅薔薇も幸せな夢に包まれて、三姉妹のあたたかな夜が過ぎていく。

 ――May the miracle of Christmas fill your heart with warmth and love.
 ――Merry Christmas!

※担当『remo』

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