イラストSS

「あぁ、ディルク様ではありませんか！」
　何時ものエルス・ティーネ(p3p007325)より『全然快活な大声』を聞いた時、ディルク(p3n000071)は本能的にもう、ハッキリと理解していた。
「今飲み比べの勝負をしてたんです
　ディルク様も私と勝負しませんか！
　私これでもこの世界のお酒には慣れてきたんですよ！
　つよいですからね。簡単に負けたりしませんよっ！」
（ああ、こいつもう――）

　――完全に出来上がってやがる、と。

「ま、いいけどさ」
　ディルクは自分に明らかな好意を向ける女の視線を理解しない程、『下手くそ』な男ではない。しかしながら緊張に伏し目がちになるエルスをからかうのも楽しいが、時にはこんな姿もいいものだと考えていた。
『彼女が自分に勝てるなんて百に一つもあるまいが、そんな子猫の甘噛みを上手くかわしてやるのはいい男の義務』なのである。
「……ふにゃあ」
　果たして始まった『勝負』は程無く。酔いが本格的に回って小さな寝息を立て始めたエルスの有様で終了する。
「ディルク様も悪い人ですねえ」
　酒場のマスターに「どこが」と肩を竦めるディルクはそんなエルスに上着をかけてやりながら――
「義務は一個じゃないし。ほら、『追いかけたくなる程度には魅力的でいてやらないといけないじゃない？』」
　嘯く彼に「ははあ」と周囲が苦笑する。
「もう一個注文な。
　――暫くは、お嬢ちゃんが起きる程には騒ぐなよ？」

※担当『YAMIDEITEI』