PandoraPartyProject

イラスト詳細

パーティは終わらない

作者 naporitan
人物 リュグナー
ジェック・アーロン
十夜 縁
ヴェッラ・シルネスタ・ルネライト
タルト・ティラミー
イラスト種別 5人ピンナップクリスマス2018(サイズアップ)
納品日 2019年01月14日

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イラストSS

 キャンドルライトの揺れる夜。
 綿と木の実と金色のコインで装飾されたもみの木が、情報屋『フリートホーフ』の屋敷内に立てられていた。
 ここはデータの崖。有益な情報の眠る墓場。人々の喧噪から隔絶されたかのように静かな裏通りの、いつもclauseプレートがかかったドアの先。
 どこか廃れたリビングルームに、異界の者たち集まっていた。
「今日ってどういう日なの? お菓子食べ放題の日!?」
 片手にカットされたケーキ、もう片方の手には棒付きキャンディ。たいそう欲張ったフォームで、タルト・ティラミーは長く巻いたツインテールを左右に揺らしていた。
 その状態でどうやって両方を食べるのかと思いきや、キャンディを舐めつつ器用にケーキを少しずつかじっていた。
 ドアが開き、並べられたグラスの一つを手に取る女。
「相変わらず元気が良いの。食べ放題かは知らぬが、賑やかな日には変わりないようじゃな」
 ヴェッラ・シルネスタ・ルネライト。どこか妖艶な声色と狐めいた獣耳。
 グラスのそばに置かれたシャンパンの瓶を開けると、中身をグラスに注いでいく。
「……して、趣旨は?」
「趣旨を尋ねるまえに酒でグラスを満たすとは、流石だな」
 どこか傾いた木製の椅子に、一人の男が腰掛けている。彼はニッと唇の片端だけを上げて笑った。
 包帯のようなもので目元を覆った、この屋敷のオーナー。リュグナーである。
 彼は立ち上がると、もみの木をおもむろに指さした。
「クリスマスパーティーというものを知っているか」
「栗?」
「鱒?」
「おいおい、随分色気のねぇ返事をするもんだな」
 声に気づいて振り返ると、もみの木の裏にヒレ耳のついた和服の男があぐらをかいて座っていた。
 手にはとっくりと御猪口。中身は薄く黄色がかった清酒である。
 彼の名は十夜 縁。ただし『十夜』の部分以外を名乗っていないので、呼ぶ者はみな十夜と呼ぶ。
「なんじゃ、十夜殿は知っておるのか」
「どうかね。シャイネンナハトの亜種くらいとしか……」
 役立たずのフリをして肩をすくめてみせる十夜。
 相変わらずの様子に、タルトはケーキを一切れまるっと平らげてから親指についたクリームをなめた。
 シュコー、と音がする。ジェックの呼吸音だと、すぐに気づいた。
 黒いドレスを着て座り込み、装飾されたもみの木をぼうっと眺めていた。顔面は決してとれないというガスマスクに覆われ表情はよくわからないが、どうやらもみの木の装飾が物珍しいようだ。
 ジェックはシャンメリーの瓶に直接ストローを突き刺してちゅるちゅるとすすっていた。
「パーティーってキラキラしてるんダネー。あとなんかシュワシュワもしてる。リュグナー、これがクリスマス?」
「当たらずとも遠からず、だな」
 リュグナーは部屋の面々の顔ぶれを見てから、どこか遠い場所を見るようにもみの木を見つめた。
 ある世界。ある時代。ある土地では、年に一度だけはあらゆる人種が平等に木の下に集い、歌って飲んで踊ったという。
 この世界にもあるのだろうか。
 そんな……ヤドリギの伝説が。

 ※担当GM『黒筆墨汁』

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