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聖夜に少女はただ独り
聖夜に少女はただ独り
イラストSS
ああ、今日はシャイネン・ナハト。
今宵は皆が楽しみ、笑い合う夜。
賑やかな町の様子を眼下に、メルナはただどこへ焦点を当てるわけでもなく眺めていた。
いいや、そこを"見て"などいないのかもしれない。本当に見ているのはきっと──兄がいた、過去の思い出。
兄のいないこの時間は、それが幸せな時間だったからこそ尚更、とても遠くにあり現実味がない。鮮明に思い出すことのできる過去は、目の前のそれより遥かに近くに感じるものだった。
(……けれど)
シャイネン・ナハトを遠くに感じていても、遠くに在る訳ではないように。過去の時間を近くに感じていても、近くに在る訳ではない。
しかしだからといって、シャイネン・ナハトを楽しむには兄との幸せな時間が──あるいは兄という存在自体が──メルナの中では大きすぎた。
(ここに……お兄ちゃんがいたら)
それは叶わぬ願い。だから星には願わない。メルナは空を見るのではなく、町を見下ろす。
その横顔は静かでいて、どこか雪よりも冷たく思わせた。
──少女は今宵も独り、聖夜を離れて。
※担当GM『愁』