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ライハ・ネーゼスの佐東敏生によるシングルピンナップクリスマス2018(縦)
ライハ・ネーゼスの佐東敏生によるシングルピンナップクリスマス2018(縦)
イラストSS
●面白くない日
「――輝かんばかりの、この夜に、か」
眼下に広がる幻想の商店街を見下ろしながら、ライハはぼそりと呟いた。
行き交う人々は白い吐息を漏らしながら、聖夜を愉しむべくそれぞれの目的地へと向かっていく。
眩いまでのその人と街の光にライハは目を眩ませながらも、心の中には一つの虚しさを宿していた。決して孤独だったからではない……あまりにも何も起きない事に、物足りなさを感じていたのだ。
喧騒は争いを産まず、降り積もる雪は体温を奪えど死へ至らしめる事も無く、大地は震える事もない。
「こういった善き日にこそ、災いはおこるべきだろうに――」
彼自身、この考えは間違っていると知っていた。だが、「物語」を愛し求める彼の本心はこれを良しとしなかった。
『完全に平和な日』など、あってはならない。完全に善き世界、善き夜にあるのは『退屈』。そこに『物語』は生まれない。生まれるはずもない。
そう、だからこそあの世界も、また――。
「……つまらない事を考えてしまったな、大人しく帰ってさっさと珈琲でも飲もうか」
目を瞑りため息を吐くと、彼もまた下にいる群衆と同じ様に自らの買い物袋を抱え自らのあるべき場所へと帰っていく。それは聖夜の魔法によるものか、それとも――。
「……輝かんばかりの、この夜に」
※担当GM『塩魔法使い』