イラストSS

「――次はあの家ね」
　イーリンは言う。次なる目標をその目に捉えながら。
　シャイネン・ナハトの一夜にイーリンはミーナと共に屋根の上にいた。その姿たるや赤き衣に白き袋を抱えて。この時期特有の姿をしながら、だ。まぁただ、その……
「さっきの家は寝付いていたから良かったが、あそこは灯りがついてんなぁ……」
「別の所を先にする？　不法侵入者に間違われるのはちょっとね」
「だな――く、しッ。やべ、大分冷えて来たな」
　彼女らの姿は些か以上に『薄着』であった。
　マイクロビキニにミニスカにポンチョ。赤き衣に間違いないが、これミニスカサンタである！　この時期にこれは防寒的に厳しい。イーリンは黒き全身タイツを身に着け、ミーナはマフラーを巻いているようだが吐く息は白く。二人共に周囲の冷気に微かに震えて。
「……ところでこれが正装で間違いないのよね？　この日の。本当に正装なのよね？」
「おういえー。大丈夫だ私を信じろ。この時期は皆これだ」
　騙されてますよイーリンさん！　されど訂正する者はおらずミーナの言の独壇場。
　まぁ……真偽の程は如何であれ良いとしよう。くだらなくも、闘争無きこの一夜。
　余分な何も考えなくていい幸せな時間であるのだから――

※担当GM『茶零四』