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エル・ウッドランドのRe;9によるシングルピンナップクリスマス2018(横)
エル・ウッドランドのRe;9によるシングルピンナップクリスマス2018(横)
イラストSS
ああ、幸せあれ! 幸せあれ! 今日はステキな日だ!
商人たちの売り口上があたりに響く。買い物に来た子供が、母親に菓子をねだっている。幸せそうな二人が、終わらぬ幸せを確信している。
この世に不幸はなく、瑕疵はなく、躓きはなく、罪はなく、罰はなく。
今日はとても、ステキな日だ!
エル・ウッドランドにとってはどうだっただろう? 知っている。世界は幸せな日だ。では、エル・ウッドランドにとっては? なんてことはない。今日はただの、いつも通りの一日だ。
手に入った物をカバンに詰めて、エルは輝く通りを歩く。人々の幸せが心を上滑りしてく中で、その声が聞こえたのは、本当に、ただの偶然だったのだ。
幸せそうな、子供の声が聞こえる。
父親の笑い声が聞こえる。
子供たちをたしなめながらも、幸せを隠しきれない母の声が聞こえる。
エルは反射的に、声のした方へと視線を向けてしまった。果たしてそこには、当たり前の光景があった。年に一度の夜に、子供たちが両親と共に過ごす、何処にでもある当たり前の景色。
エルがもはや、手にする事のできない景色が。
「……おとう、さん……」
思わず、唇から言葉が漏れた。それからすぐに、涙があふれてきた。
涙を拭う手はない。抱き留める腕もない。宥める暖かい声もない。
もうない。ない。どこにもない。全て、亡くしてしまった。
調子はずれのキラキラと輝く星と雪が、他人事のように幸せを謳う。
ああ、どうか、どうかあなたに幸せあれ。幸せあれ。今日はステキな日だ――。
※担当GM『洗井落雲』