イラストSS

「……ふー……」
「……ふー……」
　異口同音。二つのため息が白い雲になって、ぷかぷかと空に浮かんでいく。
　聖なる夜に、二人が選んだのは温泉旅行だ。雪のふる、静かな夜。露天風呂の湯気は、ちらつく雪に張り合うみたいに、もくもく、もくもくと空へと浮かんでいく。
「温泉って、いいよね……」
「いい……」
　はふぅ、とリリーがあげた声に、静かにエクスマリアが答える。相変わらずの無表情であったが、リリーにはエクスマリアが喜んでいることが分かる。
「こういうのって、ふぜいがある？　って言うんだって。……ふーりゅー？　だったかなぁ」
「ふー」
　リリーが、桶に汲まれた温泉で、ぴーんと体を伸ばしつつ、いつぞや仕入れた知識を披露する。エクスマリアが掲げた掌に、雪がチラリとまいおちる。落ちた白い結晶は直ぐに水に溶けて、エクスマリアの掌の上で、小さな水玉になった。不思議気に、エクスマリアが水玉をつっつく。
「湯船にね、お酒を浮かべて、飲む人もいるんだって」
「ふーりゅーでも、リリーは、お酒はダメ」
「わかってるよぉ……あ、牛乳……湯上りに飲む良く冷えた牛乳が、美味しいんだって。上がったら、一緒に飲もうね」
「うん」
「リリーはフルーツ味が飲みたいなぁ……」
「マリアは、イチゴ……」
「でももうちょっと、あったまりたいよね……」
「……うん」
　真っ白な世界の中で、二人はふぅ、と幸せなため息をついた。


　※担当GM『洗井落雲』