イラストSS

　ネクタイを締め、バーへの地下階段を下るこの男こそ――ゲオルグ＝レオンハート。
　一方で薄暗い裏路地でフードを深く被って足早に抜ける男。不敵な笑みをフードの下から覗かせ、確かな光が瞳にあった。
　フードを脱ぎ、ポケットに手を入れたまま同じ階段を下っていく彼は――黒猫のショウ。
　二人はまるで他人のようにバーカウンターに二席あけてつくと、マスターの羊獣種に同じ酒をほぼ同時に注文した。
　間もなく差し出されるショットグラス。
　すると。ダンディ腕時計が点滅し、二人の視線が交わされた。

　席を立つ二人。
　回転扉を抜け、二人はきらめく世界へと身を任せた。
　ほどけるように脱ぎ捨てられていくスーツとフードジャケット。
　経験深き傷跡の残る胸板を晒し、屈強なシルエットを露わにするゲオルグ。
　柔らかくなめらかな腰を晒し、しなやかで細いシルエットを露わにするショウ。
　二人はシャンパンのようなきらめく黄金に包まれると、その足に、その肩に、その背に美しい礼服を纏っていく。
　さあ、カーテンが開くぞ。
　聖夜の赤い衣を肩にかけ、ステージへと現われる。
　そう、この二人こそ――！

「ダンディ★グレー！」
「ダンディ★ブラック！」
「「ふたりは――プリティ★プリンス！！」」
　そう、ここは孤児院に併設された教会特設ステージ。
　創作演劇プリティ★プリンス上演会の真っ最中だ。
　目を輝かせる子供たちにプレゼントを颯爽と配ると、二人は黄金のマイクを掴んで歌い始めた。
「それでは聞いてくれ」
「この輝かんばかりの夜と、君たちに贈る」
「「ロマンス・プレゼント・フォー・ユー！！」」