デスクとソファー、簡素なベッドのある部屋。

デスクの上には情報収集用に練達から取り寄せたジャンク品から組み立てたパソコンが。
どうやら情報系列への観覧には使える様子。（今後機能がグレードアップする可能性あり）

ちなみに、手芸用品はクローゼットの中に綺麗に整頓されている。
（暗器系は分かり難い所にしまい込んで居る様子）

んー…まあ、吐き出すって言っても…なぁ…
俺が求めてた繋がりが相手にとっては俺の存在ごと地雷だったみたいで…。今はもう、アンタがクランにしてくれて埋まった事だしいいんだ。血のつながりが無くてもクランで居てくれるんだろ？
(話しの内容から血のつながった人間の話しらしいことがほんのり伝わったかと)

うるせーな…初心だったのは15年も前だよ…今はこの通り人見知りだっての…
……其れも認めるわ。偶にショック受けることはあるし

血の繋がりなンざ今更だろ？
オマエはオレのガキだ、それでイイ（慰めようと撫でて）

今も潔癖なとこあるもんなァ

ん……。ありがとう。……母さんとかおふくろって言うにはやっぱ抵抗あるな…でも、アンタのガキってのは、うん。悪かねえかな…（撫でられて尻尾がゆらんと機嫌良く揺れる）

あんま人信用するの出来ねえんだよ…

オマエがもう少し大人になったら姐さんとかでイインじゃね？

…そうかァ？

ん。暫くはこれでいいや…

…信用したさ半分、怖さ半分だからな…

あ、物運び込むの支度するか？

ン、オマエの好きにしろ

信頼するなら、裏切られる覚悟もしとけよ？

あー…そうだな、そうするか…オレも宿から色々とってこなくちゃいけねェし、引き払わなきゃな…

おう。

…まあ、それは覚悟してる。……アンタはそう言うのしないって信じてるけどな

俺、一応落ち着いたら銀影に一報入れて、ダレンにも入れとかねえと。世話になってるし

…さァな、オレだってやるかもしれねェだろ
思わず戦えるって聞いてふらっといなくなったりな？

ン、そうだな…そうしとけ…さて、オレは宿に行く
巣の場所はここだから（おおざっぱな手描きの地図渡し）
ンじゃ、また後でな（尾を揺らし、出て行った）

ん。わかった。後で行くわ(地図を受け取ると尻尾で見送り)

…俺の言う裏切るってそういう意味じゃねえんだよ。(袋などに必要な物詰め始める)

(手紙を2通書いて封筒に入れるとランベールの部屋とダレンの部屋へと挟みに行く)

ん、良し。…行くか。

…バリガを待たせるの悪いからな。(何方かと言うと自分が早く住処になる場所を見たいからなのだが、その辺素直になれない雪豹だった。荷物を手に、部屋を出る)

（窓から覗き込んだ時にちょうど声が聴こえ、瞠目する）
（部屋の中にはいないようだ…今のはどこから聞こえてきた？）

…っていうか、これ、どうやって入れば…（ふと、窓に犬猫用の出入り口を見つけて、喉奥で唸る）…これ、え、ここから入るしかねェの？…マジ？
…えええ…ううん……（なんとも言えない葛藤。だが、あのままにしておけないので渋々と獣姿になって潜り込む）

…なンか、オレ、今何かを捨てた気がする…（心なしかよろよろした足取りで内側から扉の鍵を開け、廊下へ出て行った）

偶に空気の入れ替えしねえとなぁ…(部屋へ扉から入り、窓から直ぐに庭へと出ていく)

(手紙を片手に、静かに入ってくる)
…アルク、いらっしゃいますか？

（窓を開けて風通しよくした室内のデスクに向かい、所長やイザーク以外が片せる書類を処理している。牛王が訪ねてくるまで手持ち無沙汰もなんだし、これから視せる過去の事を一人で考えて居ると気分が沈みそうで…文面へと思考を向けることで気を紛らわせているのだ。ｶﾘｶﾘｶﾘ…と言うペンを動かす音が部屋に響いている）

……（ふーー…）…（かなり集中しているらしく、暫く入ってきたのに気が付かないが、声にビクッと肩が揺れ）
あ、お、おう…居る…ってかノックは？（したか？と静かに驚いた顔で牛王を見上げる）

ああ、すみません…戸を叩くのを忘れておりました
(と、こんこんと手甲で扉を軽く叩きつつ)

…お仕事中でしたか？

この野郎…(最初にしろよ、びっくりするだろってジト目になりつつ煙草の火を消し)

ああ、待つ間やってただけだから気にすんな。…紅茶しかねえけどいいか？(椅子から立ち上がるとカップを戸棚に取りに行き)…ソファー座ってていいぞ。

(ジト目されたのを見て察し)ごめんなさい、
誘われる立場になるのは初めてなものでつい…

ええ、大丈夫ですよ。ありがとうございます
(ゆっくりとソファーを座りながら)
…ちなみにアルクはらむれーずんとか、そういったのいける口ですか？偶然、美味しそうなクッキーを買ってみたのですが…
(と、手紙が握られた手の反対の、もう片方の手に持った箱をみせる。中身はラムレーズン入りのクッキー)

まったく…人の部屋に上がり込むときはノックするモンだから覚えとけ、礼儀だぞ。……前までの俺ならナイフ投げつけたかも知れんし（ボソッ）

ん。（冷蔵庫…まあこの世界ではそれに準ずる機能の箱なのだが。其処から冷した紅茶を出すとカップへと注ぎソファーの方へと）

ああ、そう言うのは嫌いじゃない。なんか悪いな…土産まで。（隣に浅く腰掛けると紅茶を目の前のテーブルに置いた）

以後気をつけます……刃を投げるのも礼儀でしょうか？
(小声になんとなく聴こえて)

いえいえ、元より考えていたことですので…
…しかし事務所、というのは奇妙なものがたくさんありますね…元より世間知らずの身ですが、それでも見たことがないのがたくさん…(タバコやらパソコンやらを見ながら)

あ、いや…ナイフは、あー…なんつーか、此処使い始めた頃は俺、急に人が来るの駄目でさ…反射的に威嚇で投げてた。
職業柄、そういうの癖ついてて。

ん？ああ、そういや俺が煙草吸うの初めて見たっけか。…煙たいの嫌いだったか？（目線に気が付いた）
アレは練達の機械だな。此処だとあんまし役には立たねえけど、無いよりはな。

そうだったのですか…確かにいきなり入れば驚きますが、
刃を投げられると驚いてしまいます…
アルクの職は、驚かしあいができる程の技が必要なのでしょうか…？

いいえ。確かに煙草の臭いは、少々苦手ですが、
アルクのは果物のような香りがして心地よいので、このままでも。
成る程、これが練達の…私が生きた時よりもっと先の時代の智慧の結晶、というものですね…後で少し触ってみてもいいですか？

…暗殺業やってた。簡単に言うと人を殺す仕事だよ…今はもう続ける気はねえけど、俺は人の命を金と、俺の目的の為に奪って来てる。

そか。（なら換気だけ気をつけてりゃいいな、と。）
構わねえぞ。あ、壊すなよ？

…だろう、と思いましたよ。
忍者でも似たようなことすると、聞いたことがあります。
…アルクの目的、というと？

無粋な真似は致しません…
ただ、使い方を教えていただければ幸いです

んじゃ、この後余裕あったら俺のわかる範囲で教えてやるよ。（牛王が驚かなかったことに意外だって顔をしながらパソコンの事は置いておこう、と言いつつ紅茶に口を付け、一呼吸。）

……………天儀への復讐。その為の裏での名声、技術の向上…そんな所だ。
俺の両親は天儀の兵士に殺されてる…15歳の時に、目の前で。手紙に書いただろ？大事な人間が二人、目の前で死ぬ所をって。
……俺の両親だよ。

天儀…（最近街角で、ローレットでよく出る国名。心の中で繰り返し反芻しながら）
そういえば、以前貴方は天儀にいたことがある、と。
アルクの両親は殺された、とは何度もおっしゃっておりましたが、
その相手が…天儀の兵士とは。

そう、居たよ。正しくは連れて行かれた。

目の前で、理不尽な理由で親の首が飛んで、何が起きたかキチンと理解出来ない状態で俺は連れて行かれて…天儀の子供として神の慈悲を受けたなぁ。裏ではそんなのじゃ無かったが。
…労働力として扱われてたんだ。俺は怖くて従ってた。…ただ、あの国の教えにはどうしても馴染もうと出来なくてな。で、紅い目を異端の根源とか言われて潰されそうになった。（右目の傷へと触れながら）
俺の全てを奪った国に連れて行かれて、洗脳されかけてたんだ。
中々馴染まないから業を煮やしたんだろうな…それまで溜まってたモンが俺の大事な、父さんそっくりな眼を奪われそうになって…こう、ブチッと。大暴れして逃げた。
で、偶々通りがかりのハイエナにボロ雑巾みたいになってる所を拾われたんだ。

（無意識に膝上で組んでいた手指を強く握る。
アルクの眼を通して見たというわけでも、目の前に肉親が殺された経験もないのに、
容易に想像してしまうのはなぜだろう）
……天儀は、胸糞が悪いことが多い、とローレットでよく聞きましたが、そこまでとは。
……ハイエナ、というと……ハイナでしたか。たしか。

これは俺が体験した事に過ぎねえよ。俺以外が体験したかどうかも知らねえ、俺だけかも知れないし、俺以外も同じような事になったやつが居るかも知れない…その辺は判らねえからな。

あの国は此処みたいに発展途上ではない…力関係、国のしきたり…それが完全に出来上がった国だ。
箱庭…て俺の兄貴分は表現したがまんまだと思うぜ。

そう、俺の暗殺の師匠。虫の息だった俺の目が気に入ったんだそうだ。力を付けたい、復讐したいって思ってた俺には丁度良かったからな。……今でも人殺すのは自分に蓋して殺ってる。それのやり方を教えてくれたのがハイナだ。

…けれど、天儀以外で似たようなことがあったような気がします
私の記憶はあいまいですけどね…

完成した国、箱庭……強い、のでしょうか。

自分を蓋して殺す…（想像しながら）
…どうあっても怒りのままに人を殺しかねないのですが、どういう感覚なのでしょう…

洗脳手前で逃げられたのはそう居ねえだろって意味な。神の鉄槌を俺は運良く回避したんだ。

取り入る隙があるかないか…深緑みたいにわかり易い閉鎖的な国じゃねえけど、信仰の違う奴等に頭を下げる事を良しとしない連中だぞ。

まあ、ローレット所属で、依頼はローレットから俺達に持ってきてるんだ…下手に手は出せねえよ。
つか、俺の話聞いたからって変な気起こすなよ？俺が一番避けたがってた事だぞそれ…。俺にまた壁作らせるようなことすんなよ。

仕事だからな。（と一言。）
天義の人間なら怒り任せもあったが…。
んー…。感覚、なぁ。その辺蓋して殺ってるから…強いて言うなら、終わって帰ってきて吐いてる。
胸ん中がグチャグチャに掻き回されて堪らなくなる感じ。
殺る瞬間ならそうだな…なにも考えない様にしてる。

つまるところ同じ信仰同士で強くなった国…ですか…

(静かに話を聞きながら…変な気を起こすなよ、に対して)
…いいえ、そこまでは。特異点の中では天儀の方もいらっしゃいますし、天儀の皆がそうでないことも信じています。
アルクの話を聞いて、天儀は「想いが同じだからこそ強くなった国」だと、思いましたよ。そこに罪はない。
…けど、やはり、アルクみたいに理不尽な理由で大切な人を殺されるようなことがあれば…何が相手でも、私は助けたい、と思います。これは、天儀に限った話ではありません。

何も考えないように…
…あの魔種の時みたいな…(独りごちそう呟く)

んや、信仰で上が完全に民を支配してる国だ。幻想とは訳が違う。

嗚呼、そうだな…。………同じなら…何故司祭が神の鉄槌で民を殺す？同じならそんな事は起こらない。
誰しもが同じ思想なら平和さ。抑圧されてる人間も居るんだ、あそこの国は。

……牛王は優しいな…仕方の無い事って言わねえし。

俺の両親の罪は、俺を護る為の嘘を付いたこと。
鉄帝への進行か撤退か…偶々近くにあった俺達の家に食料を渡せとやって来てな…。
明日の糧を俺の分だけ残して、「これで全部です」って嘘付いたんだ。明らかに少ない量にすぐ気が付かれて、目の前で母さんが殴られた。
父さんが「子供にすら慈悲を与えない神など神と言えるものか」って言ったらな…。
俺からしたら理不尽極まりないが、天義の人間からしたら嘘を付いたことと、そもそも天義の民ではなかった、敵国の領土に住んでた俺達は簡単に殺す対象になったんだよ。
まあ、俺は子供だったのと、嘘を付いていないってのとで「慈悲」対象だったんだと。とんだ慈悲だよなぁ…

魔種？（呟やきに対して首を傾げる）

（同じなら、何故司祭が神の鉄槌で民を殺す？）
……そうですね。協調と抑圧は全く違う。
抑圧するされている人間がいるから、こうして依頼が入ってくる、のですね。
そもそも、人間最初から同じような考えで生まれてこない…と、私の考えなのですが。
信仰にかなり強い方が、上にいるからこそあの強固な国になっていったのでしょうね、
獅子が立つ、というみたいに

（仕方の無い事って言わねえし、に対して苦笑する）
どうでしょうね…第一私にも前科がありますし…
杣から「罪を憎んで人を憎まず」という話を聞かされたのを思い出して、
何となくそう思っただけですよ

嘘……嘘か……
（嘘をついたのは確かに悪い、が、両親のしたことは果たして嘘なのだろうか…
「兵に全て渡せるもの」という意味での全部というのなら、嘘ではなかった、のでは…
とも、考えたりするが、それは屁理屈なのであえて黙る）
（そして「慈悲」という言葉に眉間にしわを寄せる）
「慈悲」……ですか……
父の言葉に感じたことでもあったのでしょうが……両親を目の前で殺されて「慈悲」を受けられたとしても、あまり嬉しいものではありませんね

（魔種に対して）
ああ…以前のサーカス団…に従っている獣の退治の依頼を受けたことがありましてね。
その獣達は獣使いの魔種を操られていて…
ひょっとしたら、ただ従ってるだけで、言葉が通じていたのかもしれない…とは、思っていたのですが、返ってきたのが、意味の分からない声ばかりで…
それが分かった後の感覚が……たぶん「何も考えずに殺す」、のだったのかもしれない、と
まあ、その前にそれに似たことがあったのですが…

…すみません、話をそらしてしまって

ま、俺はあの国の正義が肌に合わないんだ。……それに、未だに怖い。復讐に駆られてた時は恐怖もどうでも良くて、自分が不正義だと殺されるのもどうでも良かったんだけどな…今は周りと生きていられなくなるのが怖いんだ。

あと、天義の人間に関わる際、あの国の正義を貶す言葉は吐かないほうがいいぞ。特に、あの国の益になる依頼を受けた時はな。
…アイツ等の正義以外は不正義と見做される。

……目の前で自分の全てが崩れて何も見えくなったからな…俺も一緒に殺してくれてたらって何度思った事か。
それに、俺の為に付いた嘘で死んだ両親想うとな、自害出来なかったんだわ（悲しげに笑い）
幾ら苦しくても、怖くても死を選べなかった。その結果復讐に駆られたんだが…

なるほど…牛王、洗脳ってのはな、どうしようも無いんだ。獣も信じた主人に付いてるなら生半可な事じゃ動かねえよ。…嫌なら受けるな、他の人間がやれば済む。道理だろ？
……牛王が心を痛めてまでやらなくていいんだよ。


いや、大丈夫だ。今日は話ししに来たんだろ？逸れたっていいさ

…私も、聞く限りでは、気が狂いそうですね
元の故郷が恋しいからかもしれませぬが
（と、肩をすくめつつ）

（復讐に駆られたときは恐怖も殺害はどうでもよかったが、
今は周りと生きていられなくなるのが怖い）
…それは、貴方のことを大事に思う仲間や家族がいた…いるから、でしょうか
私も…復讐ではありませんが、何れ国へ売られていく身でしたし、
この世界に飛ばされ、杣がいない時はもう、途方に暮れていましたから
こうなったら普通の畜生になった方がましだ、と思う程にね
…けど、貴方みたいな方々と出会って、私自身、改めて存在価値を見出して…そして…
初めて怖い、と思った。死ぬことが、普通の牛に戻ることが。本能だけではなく、心から、そう思った
それは、貴方達がいたから。そして心の傍に、生きろという言の葉が、残っていたおかげで、今も私は私として生きている
…だから、お互いに大事に思う方がいらっしゃる限り、簡単に死なないと、信じています
それがどんな形であろうと、ね

もし、貴方が怖いと仰るのなら、私が傍にいる
離れても、心の中にいても恐怖を晴らす、そんな存在に私もなりたいのです
…て、そこまでいくと只の独りよがりですな（一人で勝手に呆れつつ）

（正義を貶す言葉は吐かないほうがいい）
ご忠告痛み入る。天義の依頼を視る際は良く内容を吟味するようにいたします
とはいえ、生憎畜生の頭ではどうしようもないこともあるので…その際は、アルクにも相談乗ってもよろしいでしょうか？
無理とは言いませぬが

…アルク、苦しみや恐怖を抱えすぎて死を選ばなかったのですね
一杯、だったのですね
（アルクの傍に寄り添おうと、ソファーの座る位置を、アルクの近くに）

…確かに、心を痛めましたよ。同じ畜生として殺すのは…けど、結局は魔種に染まっていた
それを見逃し、止められず、街の人が殺されていく方がもっと心を痛めていたのかもしれません
…それに、この心の痛みは、これ以上被害を広げないようにするために必要です
純粋な獣達が魔種に利用されないようにするために、ね

…ふふ、ありがとうございます。アルク。

ん……すまん、ちょっと待ってくれ…（思い出して口にした事で心臓が締め付けられているような、そんな感覚を抑え込んでいたがそろそろそれもキツくなってきた様子。。胸元を押えて深く息を吐いて平常心を保とうとする。…ぽたり、と暑さからではない汗が床に落ちた）

………やっぱ、駄目だな…天義に居た時と、父さんと母さんが死んだ瞬間を思い出すと…どうしてもこうなる…
息をするのがやっとになっちまう…

…なあ、牛王。頼むから……天義の連中に殺されるなよ。下手な事言わなきゃ済むんだけどさ…もう、俺の大事なものを奪われたくないんだ…
俺の恐怖を晴らすならさ、頼むから両親みたいに殺されないでくれ…俺を、置いて行かないで…（ｶﾀ…と身体が小刻みに震えだし）

俺は…簡単に死ぬ気、ねえから…だから簡単に俺の目の前から、この世から去らないで欲しい…
相談には乗れるだけ乗るが…あんまり期待しないでくれ。俺はあの国は恐怖心の方が勝る。

………俺は、俺の周りの優しい奴らが心痛めるのはな…甘いと言われるかもしれんけど、見ていて辛い。
この間牛王の家を訪ねた時も、その辺…少しでも何とかしてやりたくて…。
………俺は、我儘だな。悪い、今の忘れてくれ。牛王は好きに生きたら良いし、俺なんかの言葉を聞かなくていい。

少しはマシになったと思うんだけどなぁ…日向を避けなくなった代わりに、今度は日陰が寒くて、怖くて仕方ない

(苦しそうにしているアルクの姿に、はっとして、心配になる)
…申し訳ないです。
一先ず息抜きにクッキーを食べます？

(置いて行かないで、目の前からこの世を去らないでという言葉に対して、不意に杣の姿が思い浮かぶ。同じようなことを何度も言われたのだ。泣かされたりもした)
(…元より短命の身だ、友を目の前に絶対に死なないという保証は無い。軽々しく約束ができない…が)
…ありがとうございます(と、静かに背を摩る)

いいえ、ただの我儘だとか甘えだとかは思いません
心を痛める姿に心を痛むのは、私とて同じですから
…しかし私はそんなに優しい、というわけではありませんよ？ 我ながら意地っ張りなところもあります故
(ふ、と笑ってみせる)

日陰が寒い、か…(部屋の中を眺め、ふと思う)
…ところで、この長椅子、
横になってもよろしいでしょうか？

大丈夫…悪い、心配させちまったな…(背中を擦ったり一息つこうと提案してきた牛王に首を弱く横に振り、大丈夫だと強がった)

…目の前から居なくならないでくれってのは聞かなかったことにしとけ。何時か牛王は元の世界に帰るんだ…今のは意味合いが違うけどさ…
それに、アンタは簡単に死ぬ気はないって暗に言ってんのにさ。取り乱しちまってごめんな。

バカだな…それを優しいって言うんだよ。アー…ブーメランってやつだなこりゃ。やっぱ根っこはグレシアスのままなんだなぁ(と苦笑)

ん？ああ。寛いでくれていいぞ。(急にどうした?と首を傾げながら)

いいえ……アルクにとって本当に心の痛いことだと、改めて感じ取りましたから

…やはり、悲しいものは、悲しいものですね。その言の葉に嘘はない
（次に話す言葉を言い出すべきか悩むように少しの間目を閉じた後、
自分の両の手の甲を重ね、目を見開く）
……こう言っては変なのですが……嬉しいです
迷惑かけたり、悲しませたり、取り乱したり…そんなつもりはないけれど、
何かあった時に振り向いてくれないのも、寂しいから…
だから、嬉しいんです。安心して人間として生きていけます
…だから、そう、謝らないでください
（黒い目を細めて、微笑む）

おや、意地っ張りも優しいのうちに入る、とでも言いたいのですか、
では貴方もそうですね、グレシアス？
（と、意地悪そうに笑う）

（寛いでくれていいぞ、と言って、ソファーに背を預ける）
なんだかさっきから、この長椅子の心地が良くて
…肌がつるつるなのに、ふわふわなのですよ
失礼ながら、この上で一日眠りたくなるような…

（少しの間を置いて話し始めた牛王の言葉に耳を傾け）そう思ってくれるならこっちも安心というか嬉しいというか…ん、まあその…何時かお別れって思うとな、やっぱ、こう。
………………寂しいだろ（目を逸らしてからボソッ）

違ぇわ（そうじゃねえよとゴスッと手刀を牛王の額へ入れようと）そこじゃねえよバーカ。
意地っ張りは優しくない理由にはならねえんだ。（身内にも同じ様なのが居るしなって顔で）
あと本名使ってからかわれると妙な気分になるからやめろ…何時もより恥ずかしさとか増すんだよ…

嗚呼、なるほど。風入ってくるからってここで休憩してると眠気に襲われるときあるからな…なんなら寝るか？一緒に。

ん？　今、なんとおっしゃいましたか？
（目をそらし、小声で言ったアルクをじっと見て）

おや
（額にゴスっと手刀が当たった。反射神経で目を閉じたぐらいで、後、痛がる様子がない）
…本当、優しさの表わし方は人さまざまなのですね。
さっき貴方から本名をおっしゃったのに……ふふ、でも気を付けます

アルクも寝ます？　お仕事、大丈夫なのですか？
……と、そういえば、ここの事務所ではどういうお仕事をなさっているので？

…テメェ…聞こえてただろ……(目を逸らしたまま絶対聞こえてたくせにって尻尾が落ち着かない)

アルクは偽名だからな…グレシアスって呼ばれると本当の俺を呼んでるんだなって無意識に思っちまうんだよ。こう、素の俺をって…。

本来俺の仕事じゃねえからいいんだ(即答)
え？荒事方面だけど。…一緒に寝るなら上着邪魔かね(言いつつ上着を脱ごうと手を掛けた)

うーん……生憎、人間の耳となると、聞き取りにくくいこともあって、ですね
（といいつつ可笑しそうに笑う）

（手刀に当たった自分の額をさすりながら）
…本当の貴方、でもいいのではないでしょうか。
アルクが「本当の自分」ではないとおっしゃるのなら、
グレシアスとしての貴方も、見てみたい、のかもしれませぬ

そうなのですか？…荒事方面、というと、ローレットの仕事と大して変わらないので？
いいえ、上衣を脱がなくても大丈夫です。私もそのまま、不貞寝するだけですから
（と、ごろりと、ソファーの上を寝転がり始める）

…寂しいだろって言ったんだよ。(なんで二度も言わなきゃならねえんだって尻尾がべしべしとソファーを叩く)

知るか。感覚だっつってんだよ…！俺は俺なのは判ってんだ…ただ、こう。…嬉しいのもあるし気恥ずかしいのもあってだな…気を赦した相手にしか教えてねえし…あー…なんて言ったらいいのかわからねえな…

ん、大体そんな感じ。事務仕事は普段やらねえよ。さっきは木を紛らわせる序でやってたんだ
…いや、俺が邪魔だって思ったから脱ぐだけだ。気を赦してる相手と昼寝するんだし要らねえだろ(そう言って上着を脱ぐとソファーの背へと掛け)
ベッド程は広かねえからなぁ。流石に二人で寝転がったら狭いだろ(自分は寝転がらずに深く腰掛けて背もたれにぐたぁ…と寄りかかった)

そうですか……と、そんな小声で言わなくとも
（まあ自分も人のことは言えないが、と内心呟いて、くすくす笑う）

…つまるところ、恥ずかしいのですね
ごめんなさい、生憎牛の頭で（なんとなくわかるような、そうでないような）

なるほど……（と言って、アルクの膝上に転がろうとする）

うるせぇ。
寂しいなんてハッキリ言ったらアンタをこの先送り出し難くなるだろ…

俺も良く判んねえよ…グレシアスって呼ばれるのは嬉しいんだがなぁ…突然呼ばれて誂われると何時もより、こう…。恥ずかしいんだよ……

ん…。（膝の上に牛王の頭を受け入れ、ふわりふわりと髪の毛に手を伸ばし）
男の膝だし硬くねえか？（言いつつ尻尾で頬を擽ろうとする）

では、その言葉はしばらく心の中にしまった方が良い、のかもしれませんね
けど抱えすぎもあれなので、ちょっと吐いちゃってもいいのかと。ちょっとは。

それではいざ、という時になるまで、呼ばないことにしましょう
…と、言っても、さっきのがいざという時だったりしますけど
（ふふ、といたずらっぽく笑いながら）

特には…何せ、男の膝の上に乗せたこと、ありませんでしたからね
杣に乗せてもらったことぐらいしか（尻尾を片手で軽くじゃれるようにしながら）