グレーゾーンの戦い

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  グレーゾーンの戦い

  海洋の首都リッツパークからカムイグラへの航海ルートに『チェネレントラ港』という補給地点がある。
  海洋と豊穣の友好関係により、今後の発展性が望めるこの港を奪おうとする計画が練られていた……

旧『絶望の青』地域にある『チェネレントラ港』はごく最近海洋領に組み込まれたものだ。

しかし、絶望の青は魔種が支配する前はどこに所属する地域だったのだろう？
歴史家や王族であれば知っているかもしれないが、一般の人が答えられるのはまれである。

この事に目をつけた或るスカイウェザーの海賊がいた。
うまく活動を魔種の仕業に見せかけて長く海賊を続けてきたが、もう誤魔化す手段を思いつかず、彼の一党は存続の危機を迎えていた。

しかし、まともに働くなんてまっぴらごめん。楽して生きたい。
彼は楽するために知恵を練った。
国家の防衛隊が居ないイレギュラーズの領土を狙って隅々まで略奪し、その利益で遠くの土地でひとまず過ごす。金が尽きたら後のことはその時考えればいい。

戦力はある。だが問題は時間だ。海洋国が持っている船は速く優秀だ。海は広く、追手がきたら逃げきれないだろう。何かしらの手段で逃げる時間を稼がないと絶対に失敗する。

悩む彼がふとしたきっかけで手に入れた地図。新品の羊皮紙に描かれた古地図。
この"最新の"古地図によれば古代では鉄帝の領土は今よりずっと広く、現在の海洋領に大分食い込んでいる。

彼は地方の海賊。世界情勢などわからない。だが、鉄帝は以前に海洋と紛争を起こしたのは知っている。
そして、鉄帝には食い詰めている貧乏人が山ほどいる。
少なくとも飯には困らない地への移住話に乗る人はきっといる。

「よし！完璧な計画だな！」　

・視界が良くない天気の悪い日に港を襲う。高速通信船も海が荒れていればスピードだせないからな。
・移住話に乗ってきた鉄帝の連中を島に住まわせる。天義も荒れているようだし、そこの連中でもいいな。イレギュラーズどもはお優しいバカが多いから、行き場のない連中を無理に排除して即座に追い出すなんてできはしない。
・私党による占領だとわかると即乗り込んでくる。どこかの国がバックについているかのように見せる（重要！）
・この港を鉄帝の皇帝さんへ献上する手紙を送る。食指を伸ばさないはずがない。軍隊を出してくれれば大戦のきっかけになるのを恐れて海洋の奴らは遠巻きに警戒してるだけになるだろう。その隙に逃げ出そう！

要点をまとめた彼は拳をぎゅっと握った。
海賊船を旅客船に擬装させ、急襲による占領計画を開始した。

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